
コロナ禍によって一般的になったテレワーク・リモートワーク。会社に出社しなくても、自宅やサテライトオフィスで仕事ができるようになりました。テレワークやリモートワークの普及によって、仕事とプラーベートの両立がしやすくなっています。
しかし、新しい働き方は様々なメリットを生み出してきましたが、ミスコミュニケーションというデメリットも生んでいます。特に注意すべきはハラスメント(いやがらせ)とも捉えられる状況です。
業務を円滑に進めるためにも、特にマネジメントを担当する人はその点に注意する必要があります。
そこでこの記事では、リモハラ・テレハラについて詳しく解説していきます。またトラブルの原因と対策もまとめましたので、ぜひ最後までご覧ください。
リモハラ/テレハラって何?

リモハラ・テレハラとはリモートワークやテレワークなど、オンライン上で起こるハラスメントです。ハラスメントは「いじめ・嫌がらせ」のことで、相手に不快な思いや暴力を振るうことを言います。
リモハラ・テレハラはWeb会議や電話、チャットを使用して上司が同僚や部下に対して、パワハラ・モラハラを行うのが一般的です。具体的にWeb会議中に容姿をバカにしたり、業務に関係ないプライベートな部分を必要以上に聞いてきたりが挙げられます。
注目されるようになった背景には、2020年に新型コロナウイルスが流行したことです。流行する前は、会社に出社して働くのが一般的でした。しかし、感染拡大を防ぐため会社以外で働くようになり、Web会議システムやチャットツールなどが普及したことでリモハラ・テレハラが注目されるようになりました。
ハラスメントの主な種類は以下のとおりです。
- セクシャルハラスメント:性的な嫌がらせ
- パワーハラスメント:攻撃的な嫌がらせ
- モラルハラスメント:精神的な嫌がらせ
- アルコールハラスメント:アルコールを無理矢理飲ませようとする
- マタニティハラスメント:妊婦や出産に対する嫌がらせ
上記のようにさまざまなハラスメントがあります。しっかり把握していないと、指摘される可能性があるでしょう。
またリモハラ・テレハラはオンライン上で行われるため、周囲に気づかれにくいのが難点です。実際に見かけても証拠が少なく相談できないこともあるので注意が必要です。
どんなハラスメントが起きるの?

実際にどのようなハラスメントが起きるのか知りたい方も多いのではないでしょうか。
オンライン上だとハラスメントを受けても気づかないことがあるかもしれません。事例を把握することで適切な判断ができ、他の従業員に相談しやすくなります。さらにハラスメントの現場を見かけたときにも活用できるでしょう。
こちらでは以下の3種類を解説していきます。
- セクハラ的ハラスメント
- パワハラ的ハラスメント
- モラハラ的ハラスメント
それぞれ解説するので、参考にしてみてください。
セクハラ的ハラスメント
セクハラ的ハラスメントは、性的な嫌がらせです。
主な事例は以下のとおりです。
- 服装や体型を指摘される
- 室内状況を知ろうとする
- 個人的に接触を要求される
- 性的な行動を受ける
1つ目は「服装や体型を指摘される」ことになります。服装や体型など業務に関係ないことを指摘されることです。例えば化粧の有無や体型の変化などを指摘されるのが挙げられます。
さらに服装の変更を要求されたり、見られたくない部分を画面に移すように求められたりなどもセクハラに分類されます。
2つ目は「室内状況を知ろうとする」ことです。室内を見られるのが恥ずかしいと感じる方は少なからずいます。Web会議で室内を映したくないのに、見せるように強要されるのもセクハラになります。
3つ目は「個人的に接触を要求される」ことです。必要ない1対1のWeb会議やSNSを聞いてくるなどが挙げられます。業務と関係ないプライベートな要求をされることが特徴です。
4つ目は「性的な行動を受ける」ことです。会議中に上司が服を脱ぎ出したり、性的な発言をしたりなどが該当します。
パワハラ的ハラスメント
パワハラ的ハラスメントは、攻撃的な嫌がらせを受けることです。
主な事例は以下のとおりです。
- 暴言を吐かれる
- 非難を受ける
- 無理な業務を押し付けられる
- 仕事以外の部分を強要される
1つ目は「暴言を吐かれる」ことです。例えば部下が仕事のミスをしたときに、上司から厳しい言葉で怒鳴られることが挙げられます。感情的になって人格を否定されるのも少なくありません。
2つ目は「非難を受ける」ことです。例えば部下のミスを長時間説明させたり、同じ作業を何度もやり直しされたりなどがあります。
3つ目は「無理な業務を押し付けられる」ことです。例えば一人ではできない量の仕事を任されたり、短すぎる期限を設定されたりなどがあります。
4つ目は「仕事以外の部分を強要される」ことです。飲み会の参加を強要されることや私生活に制限を与えられるなどが挙げられます。
上記のようにパワハラは攻撃的な嫌がらせが多いです。上司が部下に対して行うことが多く、言い返しづらいのが特徴です。さらに周囲にも悪い影響を与える可能性があるでしょう。
モラハラ的ハラスメント
モラハラ的ハラスメントは、精神的な嫌がらせです。
主な事例は以下のとおりです。
- 電話に出ないとサボっていると決めつけられる
- 残業が認められない
- 業務時間外でも仕事の指示がある
- 子供や家族の声で怒られる
- 会議招集が来ない
- 休憩を取らせてくれない
- 連絡を無視される
- 仕事の説明をしてもらえない
モラハラはパワハラと違って、攻撃的な嫌がらせはありません。しかし、精神的な苦痛を受けるので、病気になっていても気づかない可能性も少なからずあります。さらに、目に見えない嫌がらせが多いので、周囲に気づかれず相談しにくいのが特徴です。
リモハラ/テレハラの原因

ここまでにハラスメントの事例を紹介しましたが、原因を知りたい方もいるでしょう。
事前に把握していれば、適切な対策が取れて再発防止につながります。まずは原因を把握して雰囲気のよい職場環境を目指しましょう。
リモハラ・テレハラの原因は以下のとおりです。
- ハラスメントの知識不足
- テレワークに慣れていない
- 仕事とプライベートの切り替えが難しい
- 働いている姿が見えないので過剰に心配する
- コロナ禍のストレス発散
1つ目は「ハラスメントの知識不足」です。元々の知識がなければ、自分がハラスメントを行っている自覚がありません。知らないうちに自分がハラスメントをしている可能性があるでしょう。
特に男性から女性が起こりやすいです。Web会議の画面に部屋の一部が映ることで、プライベートに対して指摘をしたり、業務以外の興味を持ったりしてハラスメントが起こります。
2つ目は「テレワークに慣れていない」ことです。新型コロナウイルスは急速に拡大したため、十分な準備期間がないままテレワークに切り替えた企業もあるでしょう。Web会議のやり方やコミュニケーションの取り方がわからないまま仕事をする従業員は少なくないでしょう。
その結果、上司がマネジメントできているか不安になり、細かい指示を出してしまいリモハラにつながる可能性があります。
3つ目は「仕事とプライベートの切り替えが難しい」ことです。リモートワークは会社に出社する必要がありません。プライベートの空間が仕事環境に変わるため、気持ちの切り替えが難しいです。
その結果、プラーベートと同様の気持ちで部下に接することがあるでしょう。さらにコミュニケーションの取り方も曖昧になってしまい、リモハラ・テレハラにつながるのです。
4つ目は「働いている姿が見えないので過剰に心配する」ことです。リモートワークは同僚や部下の姿が見えないので、しっかり仕事を行なっているか心配になりますよね。相手の状況を把握するために、電話やメールなどをする頻度が増えます。
その結果、必要以上の連絡をしてしまい、リモハラ・テレハラにつながる可能性があります。
5つ目は「コロナ禍のストレス発散」です。新型コロナウイルスは仕事だけでなく、プライベートにも影響を及ぼしました。満足に外出することができず、ストレスが溜まる方もいるでしょう。
そして、ストレスを職場で仕事をミスした部下に対して発散する方もいるかもしれません。大したことではないのに、必要以上に指摘したり暴言を吐いたりして、リモハラ・テレハラを引き起こすのが考えられます。
厚生労働省の指針

日本はハラスメント大国として有名です。厚生労働省によるとパワハラによる相談件数は年々増加傾向にあります。
こちらでは厚生労働省の指針を解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
参考サイト:データで見るハラスメント(厚生労働省)
改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)とは
労働施策総合推進法は令和元年6月5日に改正され、令和2年6月1日から施行されました。通称パワハラ防止法と呼ばれており、職場のパワハラを防止するために必要な措置を取ることが事業主の義務になります。
中小事業主は2022年4月1日からの義務化です。それまでの間は努力義務となります。
中事業主の定義は以下のとおりです。
業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する従業員の数 |
小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
サービス業(サービス業、医療、福祉等) | 5,000万円以下 | 100人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
その他の業種(製造業、建設業、運輸業等上記以外のすべて) | 3億円以下 | 300人以下 |
職場におけるパワハラは以下3つの要素を全て満たすものです。
- 優越的な関係を背景とした言動であって
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
- 労働者の就業環境が害されるもの
客観的にみて上記を満たさない場合は、パワハラに該当しません。
また、パワハラ防止法が施行された令和2年6月1日時点では罰則が設けられていません。ただし、厚生労働省が必要と認めた場合、事業主に対して助言・指導・勧告が行われる可能性があります。
勧告等に従わない場合、労働施策総合推進法33条2項に基づいて、パワハラ防止法違反が行使される可能性があるので注意が必要です。
パワハラと認められる例は以下のとおりです。
- 身体的な攻撃:暴行・傷害
- 精神的な攻撃:脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
- 人間関係からの切り離し:隔離・仲間外し・無視
- 過大な要求:業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害
- 過小な要求:業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
- 個の侵害:私的無ことに過度に立ち入ること
上記の6種類はあくまでも例となります。
参考サイト:ハラスメントパンフ(厚生労働省)
リモハラ/テレハラの対策

こちらではリモハラ・テレハラを防ぐための対策を解説します。
企業側が行う対策は以下のとおりです。
- ハラスメントの研修を実施する
- リモートワークのルールを決める
- 相談窓口を設置する
1つ目は「ハラスメントの研修を実施する」ことです。ハラスメントの研修を行なって、従業員に知識をつけてもらいましょう。従業員が知識をつけることで、正しい行動が可能です。
2つ目は「リモートワークのルールを決める」ことです。社内ルールは従業員を守るために作りましょう。ルールがないと従業員ごとの価値観で業務を行うことになり、リモハラ・テレハラにつながる可能性があります。
3つ目は「相談窓口を設置する」ことです。どんなに対策を行なってもハラスメントを0にするのは厳しいです。誰でも気軽に相談できる窓口を設置するのが重要となります。相談者に不利益がないように、プライバシーを確保しましょう。
従業員側でできる対策は以下のとおりです。
- 会社に行く服装で仕事を行う
- Web会議は背景が映らないようにする
- 会議は録音する
まずラフ過ぎる服装で会議に参加すると、上司から指摘を受ける可能性があります。自宅で仕事をする場合でも、会社に行く服装にするのが重要です。さらに気持ちの切り替えができるので、仕事の生産性向上につながるでしょう。
続いてWeb会議で室内が映ると、上司に指摘を受けたり、プライベートな質問をされたりします。背景が映らないようにカメラの調整や背景設定をするのが重要です。そうすることでリモハラ・テレハラを防ぐことにつながります。
最後に会議は録音しましょう。リモハラ・テレハラを防げて、万が一の場合の証拠にもなるからです。さらに聞き逃した部分の見直しもできます。